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ゲームコントローラーの入力支援

下の写真を見て欲しい.初代ファミコンのコントローラーであるが「懐かしい」と感じる人も多いと思う.ただ.よく見ると十字キーの上にスティックがついていて,その上の部分にストローがついており,ゴムチューブを通じてAボタンにつながっているのがお分かり頂けるだろうか.

改造したファミコンのコントローラー

実はこれ,昨日の記事に書いた,大学時代の私の師匠,I先生が脊髄損傷の方向けに改造したコントローラーなのである.使い方は呼気スイッチがAボタンにつながっていて,十字キーの上のスティックを顎で操作する.実際に使用しているのが次の写真. コントローラーの使用風景

写真では将棋のゲームを操作している.もちろん,この改造コントローラーを使用しても全てのゲームができるようになるわけではない.大切なのはその人(今回の場合だと脊髄損傷者)が「できる」ことを増やすことだと私は考えている.

ちなみに当時のI先生の研究室ではどのような研究が行なわれていたか,参考までに研究テーマを引用してみる.

重度肢体不自由者の機器操作特性についての研究(現在はコンピュータの入力装置の操作特性についての研究)を行なっている.従来,重度肢体不自由者の動作特性は不随意運動の出現や動作の持続性がない(疲労してしまう),手指の麻痺を有するために操作できる適切な操作入力端がない,などの理由で健常者とは違う特殊な動作特性をもつ存在として考えられていた.

しかし我々は,健常者と重度肢体不自由者が同一の特性の中で表現され,熟練者,一般的な健常者,動作が不得意な健常者,軽い障害を持つ人,重度障害者とあらゆる段階を網羅できる新しい視点での動作特性の表現を試みている.それらの研究は,重度肢体不自由者のコンピュータ入力装置,重度障害者でもエキサイトできるゲーム装置への展開が図られている.

私にとっては「ゲームコントローラーの入力支援」に関して次の2点が興味深い.

  1. パソコンの入力支援へのフィードバック
    研究テーマにも書かれていること.もう少し深いところまで考えると,使用者の入力支援の練習にゲームを使用し,パソコンの入力支援の練習をより楽しく行なうことができる.
  2. 使用者の可能性の拡大
    この記事の頭の方に書いたことだが.コントローラーを使用することで使用者(障害のある方)の可能性が広がる点.全てのことはできなくても,ある部分は自分でできるようになる(部分参加)ことは,使用者が社会参加をしていく上で重要なことである.(「部分参加」については機会があれば説明します)

今回紹介した写真では初代ファミコンのコントローラーであったが,もちろん現在のゲームでもコントローラーの改造を行なう方もいるし,赤外線信号や無線信号のコントローラーが出てきたことにより赤外線信号を覚えることのできる「学習リモコン」や「環境制御装置(*)」などを用いてゲームを操作することも可能となった.

近い将来さらに老齢者が増えていくが,その方々は「インベーダーゲームブーム」~「ファミコン発売」時期に30~40歳代だった方たちであり,ゲームに対して抵抗の少ない方が多いと思われる.また,職場でパソコンを使用した人もおり,家でもパソコンを使用する方は多いだろう.すると何らかの技術的なサポートが必要にになるケースも発生する.そのときに今回紹介したゲームコントローラーの入力支援の技術が生かされるはずである.

改造コントローラーの話から,かなりのところまで風呂敷を広げてみた.とりあえず今日はここまで.

*環境制御装置(ECS)…赤外線リモコンの信号を記憶させたり,有線の信号等を各種スイッチを用いて操作できるようにした機器のこと.

追記:
実際に赤外線タイプのゲームコントローラー(もちろん改造したのもの)を使用している人(かなり高位の脊髄損傷者)の画像をビデオで見たことがあるが,その人は行なっていたのはなんと「レーシングゲーム」と「格闘ゲーム」だった.ほとんどゲームをしない私よりうまいに違いないと正直思った.

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