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2001年4月

テクノロジーの追走の果てに(EL&P)

ロックをジャンル分けすることに意味の無いことはよ~く知ってるのであるが,1970年代に流行ったロックのジャンルに「プログレッシブロック(プログレ)」なるものがある.昔W県のOさんと音楽談義に花を咲かせていたときにこんなものがあった.
私:「Oさん,『プログレ』ってなんでしょう?」
Oさん:「そら『キングクリムゾン』とか『イエス』とかそんなんやろ.」
私:「それって有名なプログレバンドですやん,そうじゃなくって『定義』です『定義』」
Oさん:「クラシックとジャズに対してのコンプレックスから生まれたものちゃうか.」
私:「(半分だけ納得して)なるほどねぇ…」

まぁ,これはひとつの定義に過ぎないのであるが,私の考えたバカバカしい定義のひとつに「『シンセサイザー』や『メロトロン』を使っててミョーな音を出してるロック」という真剣にプログレを好きな人からは石を投げられそうなものを考えたことがある.このコラムでは「シンセサイザーでミョーな音を出していた」また明らかに「クラシックとジャズに対してのコンプレックスを持っていた」であろうプログレバンド「Emerson,Lake&Palmer(EL&P)」をご紹介したいと思う.

実はこの「EL&P」,ファンは多いし,テクニックも高いし,実験的なこともやっているのであるが,まず「20世紀を代表する100バンド」みたいな特集をされても番外となってしまいがちなバンドであり,ファンであることを恥ずかしく思っている人も実は多かったりする.よく「ハードロック大好き少年」がたまたま「ELP」を聴いてプログレにハマり,そこから「King Crimson」に行って「Yes」に流れてなぜか「Pink Floyd」に行き,その後いわゆるカンタベリーファミリー系のバンドに逝ってしまうというパターンに陥ることがあるが,何を隠そう私が見事にこのパターンにハマってしまった患者の一人であったりする.ハードロック好きだった私はたまたまOさんからもらった「展覧会の絵」のライブビデオを観て,ラストの「ナイフエッジ」から続く「ロンド」なる曲の中で,ハモンドオルガンにナイフを突き刺し,上に乗っかってロデオをし,キーボードの反対側から演奏するというバカで無茶なことを真剣にやっているキース・エマーソンを観たときに,こういうバカってすき,ってな具合でファンになってしまったのである.

さて,メンバーを紹介しておこう.
このバンド,ロックバンドにも関わらず基本的にギターレスという変則的なトリオ編成のバンドである.まず,先述のリーダー格でオルガン,ピアノ,シンセサイザーといったキーボード楽器担当のキース・エマーソン.ELP加入前はナイス(未聴)というこれまた変則トリオ編成のバンドにいながら,メンバーとのあまりの技術の差に嫌気がさしたのと,「King Crimson」のロバート・フリップ御大から紹介されたムーグ社製のシンセサイザーの可能性を試してみようと「EL&P」の結成に向かうのであった.そしてベースとたまにギターを弾いて魅力の低音のヴォーカルを持っている男グレッグ・レイク.彼は「ELP」加入前は第一期の「King Crimson」に所属していた.そう,あの「21世紀の精神異常者」の歪んだヴォーカルは実は彼の声なのである.ソングライティングも行なっており,自作弾き語りの曲もいくつかある.そんな男である.そしてもう一人,トレーニングのために極真空手をはじめたという肉体派ドラマー,カール・パーマー.正直私は彼の経歴はよく知らん.確かにドラムは巧いが,手数が変に多いくらいが特徴かなというくらいでどうも他の2人に比べるとちょっと格が下がるかな,といったらファンの人は怒るかな?
(余談:本当はトリオ編成じゃなくってあのジミ・ヘンドリックスにギターとして加入してもらう可能性もあったらしい… もしそれが実現してたらきっと「Deep Purple」みたいなサウンドになったと思うのでそれはそれで面白かったかもしれないが,間違いなくこの4人でエゴ剥き出しになってすぐに空中分解してただろう,なんてことも考えるのよね)

サウンドとしては「ギターレスのトリオ編成」という冒険をしている以上,かなり特徴的なものとなる.メインにくるのはやはりハモンドオルガンとシンセサイザーということになる.曲の途中で「ぐわぁ~ぁん」とか「きゅぅうぃ~ん」とか妙な音が入っているのである.これがギターを補っている(ま,どうしようもないところはレイクがギター弾いてますが).ベースはヴォーカルも兼任のため大きな特徴はなくミスも少なく手堅い感じである.なんといってもレイクのヴォーカルが低音で魅力的なのが印象に残る.ドラムはプログレにありがちな変拍子もそつなくこなし,手数は変に多く,たまに「あんたが巧いのは判ったからもーちょっと落ち着けよ」といいたくなるドラムである.ちゅうか,こいつ節操ないですわ.どうしてもマルチプレイヤーとなってしまうエマーソンのセットがでかくなってきたときに,自分も負けじとメロディタムやらシンセパッドを使い始め,どうも納得いかない(単にセットをでかくしようとしたとしか考えられない)ツインバスにしたり,面白いっちゃー面白いのだが,でかくしすぎたために舞台の床が抜けかけたというのはいくらなんでもやりすぎでしょ,パーマー君.

当時のムーグ・シンセサイザーというのがこれが曲者であり,今のようなボタン一つで音が変わるという簡単なものではなかった.電気回路の配線を変えることによってサウンドに変化を持たせるという,いわば「アナログチック」な楽器だったのである.エマーソンはシンセサイザーを買うときにムーグ博士から「ちゃんと使いこなせるよう」に使用方法を伝授され,それこそ血の滲むような練習をしたらしい.それほどの曲者だったのだよ,シンセサイザーってのは.で,そんな楽器を使い生まれた名曲・名演の数々が「展覧会の絵」であり「タルカス」であり「Kern Evil#9」という2~30分の大曲であった.もちろん小作品のなかにも名曲があるのだが,こちらの方はどっちかというとレイクの作った弾き語り曲が多く,フォークもできるんだよ~んといった印象である.私の好きなアルバムは「Kern Evil#9」がメインとなっている前期最後のアルバム「BRAIN SALAD SURGERY」である(タイトルがおバカな気もしますが).

実はこのアルバム完成後2年ほどバンドが休眠状態に入るのであるが,この間にテクノロジーが恐ろしく発達していった.それこそ簡単な操作でいろんな音が作れてしまう「デジタルシンセサイザー」が登場するのである.後期の「ELP」はそういったデジタルシンセ(ヤマハ製)も導入しつつ,アルバムを何作か作成していったわけだが,誰にでも出せる音で勝負をすることが出来なくなってしまった.そのため,ツアーになんとフルオーケストラを同行させるという無茶をやってのける.このツアー,観客にとってはすばらしいものであったであろうが,バンド側にとれば大赤字で結構洒落にならん状態になったらしい.その後,「なんでこんなジャケット使たんや(大の男3人がバカンスに来たノー天気な記念写真,それまでのEL&Pのアルバムは結構アーチスティックだったのだ)」というアルバムを残し「一応」解散してしまうのである.
(その後,ハードロック界の重鎮コージー・パウエルを迎えてのEL&P(PはパウエルのPね)を組んだり,メンバーは交流を重ねて90年代に再結成し現在に至っている状態である.ここからは余談になるがエマーソンは50歳を過ぎた今でもロデオをやっているらしい,出張先でテレビをつけたらたまたまEL&Pが出てて,よりにもよってオルガンの上で暴れているエマーソンが映し出されてひっくりかえった,とにもかくもお元気でなによりです(笑))

結局のところ1970年代を駆け抜けた「EL&P」の本質とはなんだったのか?私はひたすらテクノロジーを追求していった歴史だったと思う.追いかけるだけ追いかけて,そして追い越されて,工夫したけど結局解散してしまった,というところだろうと思う.デジタルシンセサイザーの登場により音楽のバリエーションは広がった,その原点にあるものが「EL&P」の-とくにエマーソンの-音楽精神だったのかなぁと,「展覧会の絵」の中の「きゅぅうぃ~ん」というムーグ・シンセサイザーの音を聴きながら思うのであった.

追記
私の友人の皆さんには「キース・エマーソン」ってどっかで聞いたことあるなぁと思った方がいるかもしれない.そう,あの初期角川アニメの大作「幻魔大戦」の音楽監督をやっていたのが彼です.そしてプロレスファンの方には「ワールドプロレスリング」オープニング曲,あれが「EL&P(コージー・パウエル時代)」の曲(もっとも一部分なのだが)です.以上,ご参考までに…

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