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幸せな最期(映画「ワンダフルライフ」雑感)

今回は日本映画「ワンダフルライフ」の感想を書かせていただきます.

この作品,本当は一昨年映画館で観ようと思ったのですが,観るのを忘れてしまって,去年の夏休みにビデオで観ました.説明力不足の文章ながら簡単に内容を書きますと,
「あなたは死んでしまった.ここは死んだ人間の来る施設.あなたは1週間の間に『一生のうちで自分の最も印象に残った思い出』を選んで,そのシーンを映画で再現して,その思い出だけを胸に天国に旅立ちます.」
という舞台で繰り広げられる人間模様を描いた作品と書いたら良いのかなぁ…

これだけを書くと現実性の無さそうな単なるファンタジー映画に思えるでしょ.でも違うんだなぁ.この映画の面白いところは実際に何百人もの人に「一生のうちで自分の最も楽しかった思い出」をアンケートしてまわって,その中の十何人かは映画に出演もしているということに尽きるでしょう.ある意味「ドキュメンタリー」であるし,それに「ファンタジー」なストーリーもついてくるっていうお得な映画です:).

正直いうと「ファンタジー」的な部分,ストーリーはありきたりだったかなぁ,という気がしなくはありません.設定自体はよくできてたし,「映画のツボ」はしっかりと押さえられているので,涙腺の弱い私はうるうる来たのですが,あとから冷徹に鑑みると新鮮さはあまり感じられなかったかなぁと.

ただ面白かったのはそれを補って余りある「ドキュメンタリー」な部分.これがストーリーの間に巧い具合にポンポン入ってくるんです.これがまたいいタイミングで編集されてたから映画全体はめっちゃ引き締まってていい感じです.
#実際2時間を越える長尺だから引き締まってるってのは重要なポイント!

出演されている素人さんのシーンはホントのインタビューって感じで,逆に演技してない部分がリアリティを生んでいた.それがとっても面白かったです.是枝監督はドキュメンタリーを中心にもともと活躍されていたというのを後で知って妙に納得.絶妙でした.特に終盤,実際に「思い出」を再現するための映画撮影のシーンがあるんだけど,そのシーンが個人的に最も印象に残ってるかな.小さい頃のダンスの発表会のシーンを選んだおばちゃんが実際に子どもに演技指導する場面や,訓練飛行の場面を選んだおじさんの「こんな感じじゃなかったですね」とスタッフにダメ出しする場面は,妙に微笑ましかったり,不思議な緊張感があったり興味深いものでした.

先ほど「ストーリー自体はありきたり」と否定的なことも書いたけど,映画の中では見事に溶け込んでいるから違和感は感じませんでした.予算の少なさを逆手に取って現実感をだしつつ強烈な透明感のある画面が象徴的でした.
#あの透明感は全くタイプの違う映画だけど「1999年の夏休み」の透明感を感じたのと同じくらい新鮮だった.

つまるところこの映画はドキュメンタリーとかフィクションとかの垣根をモノの見事に破壊,じゃないな「融合」かな,させているという点がすばらしい,ということに尽きるかなと.一筋縄ではない面白さがある映画でした.

最後に蛇足的ではありますが,あの去年の状況下でこの作品を観たんです(生きていく自信を失ってた頃ね).見終わった後に自分にとって今まで一番の思い出ってなんだったかなぁ,なんて考えました.よく考えたら楽しかった思い出ってあんまり記憶に残ってなくて… つらかったことや苦しかったことが頭に出てきたのですケド.これから楽しい思い出をいっぱい作りたい,そう考えることで逆に生きていく希望を与えてくれた,そんな映画でした.是枝監督,すばらしい作品をありがとうございました.

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