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鳥葬

「オレが死んだら鳥葬にしてくれ.」
冗談交じりに奴はそう言った.大学前の喫茶店で,いつもは満員なのにその日は何故か奴と私,後友人二人の四人だけだった.その四人で人生観などを語っていたのである.

奴は宇宙工学がやりたかったらしいのだが,そんなことをやっている大学には入れないことを模擬テストの結果が教えてくれた.そしてこの片田舎の大学に落ち着いた.

よほど居心地が良かったのか,奴は六年間もこの大学にいた.背は低くガリガリで弱そうな奴だったが,常に自分の考えを押し通す,そんなタフな奴だった.

そんな奴が突然いなくなった.何の置き手紙も連絡もよこさずに.「まぁ,奴のことだから二,三日すれば帰ってくるさ.」みんなそう思っていた.

ところが三日後,奴の変死体が上がったことが新聞に載っていた.多分どこかの岬から身を投げたのだろう.何で彼が自ら死を選んだのか,私も友人達も家族さえも分らなかった.

聞くところによると奴の死体はカモメかなにかの鳥についばまれていたらしい.その事実を「鳥葬」といって良いものかどうか,それは私には分らない.海でカモメを見るたびに奴のことを思い出す.奴は今でも空を飛んでいるのだろうか.

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